あおのり学校へようこそ。
あおのり先生です。
今回は世界一の流通量を誇る米ドルに次いで流通している、
第2の基軸通貨と呼ばれるユーロについて解説していきます。
ユーロは、ヨーロッパ地域で使われている統一通貨です。
1999年1月発足した後に、
実際に紙幣や硬貨が流通し始めたのは2002年のことです。
ユーロ欧州通貨連盟(EMU)に加盟する18ヵ国と、
EMUの加盟国ではありませんが、
ユーロの使用が認められている3か国の
計21か国で導入されています。
ユーロのような統一通貨は、
同じ通貨を使う複数国で経済協力しやすくなる一方、
金融政策などを自国のみで自由に決定できないという不自由さもあります。
このユーロはどのような理由で変動するのでしょうか?
そこには、“政治”と“経済”と“金融政策”が密接に関係しています。
ユーロを変動させる欧州政治
欧州連合は雇用の安定を目的としています。
ユーロが上昇しすぎれば、欧州企業の国際競争力が低下して、
世界的にモノが売りにくくなるために、
失業者が増えることになります。
そういったことを防ぐために、
時として欧州政府は為替市場に介入してくる場合があります。
特に、議長の発言には注目ですが、
現在のユーログループ議長は、
オランダ財務大臣のイェルーン・ダイセルブルーム氏です。
彼には、為替介入をする決定権があります。
政府がユーロを売ったり買ったりするために、
為替介入のマーケットに与える影響はとても大きなものになります。
また、為替に対する見通しを示すことで、
ユーロの変動要因を作ります。
そのため、議長の発言には注意が必要となるのです。
欧州を変動させる欧経済指標
欧州の経済状況を知るには、
欧州の経済指標の動向をチェックする必要があります。
経済指標は、7つのカテゴリーに分けることができます。
GDP、景気、個人消費、住宅、雇用、物価、貿易・国際収支関連です。
これらを見ることで、欧州の経済状況がどのように推移しているのかの
現状を把握することができます。
そして、マーケットのコンセンサス予想と結果がどのようになるかで、
以下の経済指標でユーロの価格変動が起こることになります。
欧経済指標一覧 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
カテゴリー | 経済指標 | 重要度 | 発表日 | |||
GDP関連 | GDP | 毎月中旬 | ||||
景気関連 | 鉱工業生産指数 | 毎月中旬 | ||||
製造業PMI | 20日前後 | |||||
ZEW景況感調査 | 毎月中旬 | |||||
サービス業PMI | 20日前後 | |||||
景況感指数 | ||||||
個人消費関連 | 小売売上高 | 毎月上旬 | ||||
消費者信頼感指数 | 20日前後 | |||||
住宅関連 | 建設支出 | |||||
雇用関連 | 失業率 | |||||
物価関連 | 生産者物価指数 | |||||
消費者物価指数 | 毎月上旬 | |||||
貿易・国際収支関連 | 貿易収支 | 毎月中旬 | ||||
経常収支 |
この経済指標の中でも、ユーロの経済力が顕著にわかるのがGDPです。
下の図は、ユーロ圏と世界各国の名目GDPを比較した図です。
ユーロ圏中核国ドイツのGDPは2012年ベースでは340兆円です。
この金額は、GDP一位のアメリカの1670兆円の約1/5、
600兆円の日本の約1/2です。
ドイツは、EU全体の5分の1のGDPでありますが、
ユーロ圏全体から見るとアメリカをやや上回る水準にあります。
EU加盟国のうち18カ国(2014年1月1日時点)がユーロを採用していますが、
そのなかで圧倒的な経済力を持っているドイツの経済指標が、
ユーロの値動きに大きな影響を及ぼします。
ただ、少し懸念点もあります。
それは、ドイツのGDPに占める借金が増えてきているという問題です。
下の図は、2013年度の各国GDPと政府の総借金を比較した図となります。
リーマンショック前の2007年は65%であった対GDP比債務残高は、
現状では80%まで膨れ上がっています。
明らかにドイツの借金は急速に増えている状況です。
とはいえ、ずば抜けて対GDP債務残高が多い日本やアメリカ、
イギリスなどと比べるとその割合はそこまで大きくはありません。
一方、
中国やオーストラリアのGDPに占める債務残高は小さく、
GDPに占める債務残高は20~30%程度に留まっています。
ユーロに影響を与えるECBの金融政策
経済指標の他に注目したいのが、
欧州中央銀行(ECB)による金融政策です。
ユーロ圏は2014年現在、
政策金利が世界一低い状況にあります。
下の図は、日本、アメリカ、ユーロ圏、イギリス、豪、NZの6各国の
政策金利を2006年1月から現在まで比較したものです。
ユーロ圏の政策金利は、2007年には4.0%まで上がっていました。
それがリーマンショックをきっかけとして景気が悪化したことから、
2014年には0.05%まで政策金利を引き下げている状況にあります。
この金利が再び上昇するまでは、
欧州のユーロは大幅な上昇は起こりがたいと言えるでしょう。
ECB政策金利発表は毎月予定されていますが、
ECBがどのような金融スタンスを取ってくるのかで、
マーケットの雰囲気も変わるために注目する必要があります。
また、ECBが取りまとめる欧州経済に関する動向がわかる、
ECB月例報告も抑えておく必要があります。
毎月第2木曜日(場合によっては第3木曜日)に発表されます。
以上の3つが、欧州のユーロの動向を予想する上で、
注目すべき材料となります。
なお、
金融・財政を表す指標には以下のようなものがあります。
欧金融・財政指標一覧 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
カテゴリー | 経済指標 | 重要度 | 発表日 | |||
金融関連 | ECB政策金利 | 毎月 | ||||
財政関連 | 財政収支 | 毎月 |
ユーロ円の長期価格動向
下のチャートは、ユーロ円の月足チャートです。
1978年~2014年までの36年間のユーロ円の値動きを表しています。
この期間の最高値は1979年につけた285円、
最安値は2000年につけた88円です。
ユーロ円の価値は約36年の間に3分の1以下にまで下落しています。
2014年現在は、140円前後まで上昇していますが、
長期波動から見ると下降トレンドが継続していることがわかります。
従って、大局的に見てある程度上昇すれば再び
ユーロ円の上値が重くなる展開になりやすいことに
留意が必要になりそうです。